色んな宗教が行きつく場所、紀伊山地

世界遺産

観光地を世界遺産として楽しむ
こんにちは、朝型旅人です!

この記事では「紀伊山地」の見どころと、世界遺産としての価値をわかりやすく解説!
読み終わるころには、ただの観光地じゃない「紀伊山地」の魅力にハマっているはずです。

🌲観光地としての紀伊山地🌲

今回のテーマは紀伊山地。あんま聞き馴染みが無いかもしれませんが、
ここ、観光地としてすっごく良いんですよ。

大阪市内から電車とケーブルカーで2時間ほどで高野山に行けます。
山上には100以上の寺院が並び、宿坊で精進料理も食べれてお寺に泊まれちゃう。

さらに足をのばせば、熊野エリアへ。ここといえば那智の滝ですよ。

那智の大滝。手前に見えるのは飛瀧神社の鳥居。
高さ133m、幅13m、滝壺の深さ10mの日本一の大滝。

那智の滝は日本一の落差を誇る名瀑です。
滝と神社と深い森が一体となった絶景は、まさにインスタ映え。

道中にある川湯温泉や湯の峰温泉では、自分だけの露天風呂も作れちゃいますよと。

観光地としてのポイントを全部抑えているような場所ですね。
のんびり癒されたい方にはぴったりです。

🌲世界遺産としての紀伊山地🌲

いまさっき”のんびり癒されたい方おすすめ”とは言いましたが、
世界遺産の面も知っとけばもっと面白いんですよ。

そんなことで世界遺産「紀伊山地の霊場とその参詣道」の紹介。
和歌山、奈良、三重県にまたがっている遺産で、
登録基準ⅱ、ⅲ、ⅳ、ⅵの文化遺産です。ざっくり説明すると、

  • 神仏習合によってうまれた文化的景観だね!
  • いまも宗教儀礼が続いてるね!
  • 木造宗教建築の代表だし、芸術上の建築的価値も高いね!
  • 日本独自の宗教形態の特質を表しているね!

です。今回紹介する世界遺産としての紀伊山地の特徴は以下の通り。

では、1つずつ見ていきましょう。

もはや日本のメッカ!道行く人は敵⁉

紀伊山地は、単なる山地じゃありません。
高野山の真言密教熊野三山の神仏習合吉野・大峰の修験道の、3つの山岳霊場があるんです。

なんでこんなに色んな宗教が密集しているのかというと、
大きく2つの理由があります。

まず大きいのは、この山々の自然そのものが特別視されたこと。
まぁ歩いて歩いて、その先に大きな滝が出てきたら神秘的ですよね。昔の人達が、神や仏が宿る場所だと考えたのも頷ける。

次に魅力的な立地。京都や奈良の都から少し遠いけど、行けなくはない距離。修行には、うってつけでした。権力者、罪人が自分探し的な感じで逃げてくる場所としても最適でした。

そんなこんなで紀伊山地には色んな宗教が集まることになったと。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地であるエルサレムみたいな感じですな。

だから、道行く人々を見渡すと、自分と同じ信仰を持っているとは限らないと。
隣を歩く人は、同胞かもしれないし、別の宗教信者かもしれない。

そんな意味で「道行く人は敵⁉」という冗談も成り立つわけです。
まぁ敵ってよりかは、異なる信仰を持つ仲間の方が適切ではありますがね笑。

真言密教の聖地、慈尊院。空海が開く。
女人禁制の高野山に入れなかった女性たちがここに来ました。

ちなみに、この場所を有名にしたのは平安時代の末法思想が根底にあります。
末法思想ってのは、お釈迦様(仏教)の教えが形骸化してしまい、修行しても悟りを開くことができなくなった時代の考えです。

まぁ要は仏教の力が弱まってきたと考えられた時代ですね。

仏教の悟りを信じることができなくなった人たちが、浄土教に流れていきます。
なぜなら浄土教は「南無阿弥陀仏」と唱えれば極楽浄土に生まれ変わることができるから。

そんで、浄土教の聖地も紀伊山地にあるため、紀伊山地の信仰はさらに加速しました。
こうして紀伊山地は、様々な宗教を受け止める「信仰のるつぼ」になったんです。
だからこそ世界遺産に認められたんでしょうね。

どうして道まで世界遺産なの?歩くことの意味

伊勢路の馬越峠。伊勢神宮への参詣でも使われていて、多くの人が使用していました。
距離は160㎞、うち峠道は34㎞ほど。

もう書いたまんまです。なんで「紀伊山地の霊場」じゃいけないのか
まぁ「紀伊山地の霊場とその参詣道」ってなっている以上何か理由があるはず。

それは信仰と巡礼の文化に深く関係してるんですよ。

かつて人々は、高野山・熊野三山・吉野などの霊場を目指して、何日もかけて山道を歩いてました。しかもただ漫然と歩いてたわけじゃないんです。

参詣する際には、口にするものに制限をし、途中にある石仏や一里塚で祈りを捧げ、心を清めながら目的地(霊場)へ向かってました。

ただの移動手段ではなく、「歩くこと自体が修行」だったんです。
道も霊場と同じくらい重要な意味を持ったってことですね。
そういうわけで道まで世界遺産になってます。

しかし今は、那智の滝くらいまでは車で行けます。駐車場も完備。
観光地として訪れるハードルは大分下がりました。
まぁ観光地化が進むのは決して悪いことではないんですけど……

ほんっとうに時間のある方はゆっくり歩いてみてください。
歩くことで、昔の巡礼者と同じように心が整うかもしれません。

歩きたい方は「大峰奥駈道(おおみねおくがけみち)」がおすすめ。
この道を歩いて踏破することが修験道の最重要修行とされていて、修行気分を味わえますよ。

大峰奥駈道。視界が開ける箇所が多く、大自然を間近で味わうことができます。

家を建てるにも一苦労!文化的景観の弱点

この遺産、日本ではじめて文化的景観が認められた場所なんですよ。
文化的景観ってのは、人と自然が一緒につくりあげた景色って思っていただければ。
詳細はこちらにまとめてるので飛んでください。

んで、そんな文化的景観ならではの弱点があります。
それは周辺に住んでいる人の自由が奪われる点。

ここではかいつまんで、住宅の建て替えについて説明します。

世界遺産に登録されると、その景観を守るために建築に厳しい制約がかかるんですよ。
文化的景観として登録されている紀伊山地はなおさら。

自然も評価対象に入っているから、
景観の悪化につながることが他の遺産と比較して多いんです。

住宅建て替えも景観の悪化につながるために指摘される始末。
これってどうしようも無いんですけど、住んでる人からしたら不便ですよね。

まとめ

ということで、紀伊山地は「観光地」としても「世界遺産」としても、奥深い場所でした。

温泉や滝で癒されるもよし、参詣道を歩いて修行気分を味わうもよし。
さらに裏側には、文化的景観ならではのジレンマもある。

旅行のときは、そんな視点もちょっと頭の片隅に置いてみると、
紀伊山地がもっと面白く見えるはずですよ。

ここまでご覧いただきありがとうございました。またおいでくだされ。

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